鼠の目#360(ほぼ全文はリンクで)

鼠の目・これまでの梗概

<主な登場人物>

オレ=初老のフリーランス便利屋、通称、鼠。説教多し
オカマのマリー=オカマバーの女将、陸上自衛隊OB
ケンスケ=オレの助っ人、仏外人部隊脱走兵
山下=定年前の所轄の刑事
和田さん=事務所の雑用を請け負ってくれている素敵な女性
和田洋子=和田さんの一人娘
川崎真知子=オレの依頼人。川崎徳一の孫
川崎真理子=真知子の妹
徳永高男=波動研究会の会長、川崎徳一の嫡外子
文龍名=カルト教団・統合真理教会のボス、波動の最高幹部も兼ねる
後藤=徳永の部下、事務方、対外折衝部門の長
宮崎一平=和田洋子のサークル仲間。波動研究会の末端メンバー
長田=波動のメンバー、徳永の非公然活動を担う
滝川順平=靴屋の隠居、川崎徳一の戦友
川崎徳一=本名・李光徳、川崎姉妹の祖父
川崎良子=川崎徳一の夫人。川崎聖一の母。古朝鮮の祭祀一族の末裔
川崎聖一=川崎徳一の息子であり、川崎姉妹の父。徳一の死後、失踪
川崎篤子=川崎聖一の妻。川崎姉妹の母。廃宮家の末裔
上島上等兵=滝川、川崎の終戦時の上官。こすからい古参下士官

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山下刑事が去ったあとの空間が、妙に索漠感を匂わせていた。

オレ、ケンスケ、オカマのマリー、和田さんの四人で座っている。

時間も深更に入ってきた。

「じゃ、そろそろお開きとしようか」

ケンスケがボソッといった。

「その前に。明日、いや、もう今日ね。どうするの?」

和田さんが問うてきた。

「ああ、そうだったな。それだけは決めておこう。えー、こうしよう。昼過ぎにここを出よう。ケンスケと和田さんはオレの事務所に適当に来てくれ。昼飯を済ませてな。どうせ川崎姉妹のいる神さびた地には、しばらくいることになるだろう。念のため、簡単な携行食とミネラルウォーターくらいは用意しておく。足はオレのへっぽこカローラだ。ケンスケ。運転を頼む」

ケンスケは軽く頷いた。

続けて手元にある烏龍茶をグイッと飲み干し、指で唇を拭った。

「あと、着替えやなんかもいるだろうな。少し用意しとくといいと思う。こんなところだが、いいか」

左右のケンスケと和田さんに視線を送った。

二人は軽く顎を引いた。

「よし、それじゃ開こう。明日、いやもう今日だな、よろしく頼むぜ」

「じゃ、わたしも店を閉めよう。ちょうどキリがいいわ」

オカマのマリーがカウンターを拭きながらいった。

「ああ、それから。あなたがちゃんと和田さんを送っていくのよ。夜道は物騒なんだから」

オレに向けて、マリーのお節介な言葉が続いた。

「え?オレがかい?よせやい、照れ臭くっていけねぇや」

「馬鹿なこといってないで、オカマの忠告もたまには聞きなさいよ」

「マリーにゃいつも意見されてるぜ。オレは素直なもんだ」

「じゃ、今晩も素直になることね」

チェッ、かなわねぇや。

オカマにゃ。