鼠の目#463(ほぼ全文はリンクで)

鼠の目・これまでの梗概

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最初のヘリから降りた隊員が安全を確認し、総員がその平坦地から翼状に散開し始めた。

戦法戦略として、きわめてまっとうな形だ。

個々人のライフル技量は圧倒的に警察の方が上なのだから、一対一の戦闘では波動に不意を撃たれる心配がない。

フィールドゲームのマンツーマンディフェンスだ。

オレは固唾を呑んで、俯瞰していた。

散開し、平坦地から人影がなくなると、各方向から散発的なライフル音が聞こえてきた。

始まった、とオレは思った。

今度は波動の連中がズタズタにされる番だ。

このことは山下も同じことを考えていた。

ただ一点、異なることといえば、山下には波動に対する憎悪がある。

目前で同僚たちが殺され、さらにテレビクルーが虐殺される状況が、ありありと記憶にある。

冷静ではいられなかった。

早く殲滅してくれ、そして広場中央建物に突入するんだ!と願っていた。

ピシッと跳弾が山下のわきを掠めていった。

立ち木の肌が無様にめくれた。

本来、こんなライフル使用はないはずだが、それを行わねばねらない点が、今の状況の緊迫度を示している。

ウオオオオオー、と叫びながら波動のメンバーが一人、雑木林から広場に飛び出してきた。

額から血を流し、シャツが真っ赤だ。

それを追ってライフル部隊の一人が跳躍した。

動くな、警察だ!と叫んでいる。身柄を確保すべく、揉みあいになった。

パーン、と乾いた音が響いた。

波動の若者が膝を折り、崩れた。

機動隊員は身体を竦め、崩れた若者を見下ろしている。

パーン。

また発射音だ。

今度は機動隊員が、どうとそのままの姿勢で後方に倒れていった。

首がちぎれかけ、血がシャワーのように吹き上げた。

山下は猛烈な吐き気に襲われていた。