鼠の目#466(ほぼ全文はリンクで)

鼠の目・これまでの梗概

<主な登場人物>

オレ=初老のフリーランス便利屋、通称、鼠。説教多し
オカマのマリー=オカマバーの女将、陸上自衛隊OB
ケンスケ=オレの助っ人、仏外人部隊脱走兵
山下=定年前の所轄の刑事
和田由美子=事務所の雑用を請け負ってくれている素敵な女性
和田洋子=和田さんの一人娘
川崎真知子=オレの依頼人。川崎徳一の孫
川崎真理子=真知子の妹
徳永高男=波動研究会の会長、川崎徳一の嫡外子
文龍名=カルト教団・統合真理教会のボス、波動の最高幹部も兼ねる
後藤=徳永の部下、事務方、対外折衝部門の長
宮崎一平=和田洋子のサークル仲間。波動研究会の末端メンバー
長田=波動のメンバー、上島上等兵の息子、徳永の非公然活動を担う
滝川順平=靴屋の隠居、川崎徳一の戦友
川崎徳一=本名・李光徳、川崎姉妹の祖父
川崎良子=川崎徳一の夫人。川崎聖一の母。古朝鮮の祭祀一族の末裔
川崎聖一=川崎徳一の息子であり、川崎姉妹の父。徳一の死後、失踪
川崎篤子=川崎聖一の妻。川崎姉妹の母。廃宮家の末裔
上島上等兵=滝川、川崎の終戦時の上官。長田の父親

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一滴二滴落ちてきた雨に長田も気付いた。

そうして彼は山下が波動の若者を一人射殺した一部始終を目撃していた。

クソ警官めが、やるじゃねぇか、と妙に感心していた。

ケンスケを仕留めそこなったのは、ぬかったことだった。

もう少し跳躍が鋭ければ、他愛もなくズタズタにできたんだがな、と口惜しかった。

しかし、連れのオカマのような生白い男は、駄賃でくたばらさせてやった。

やはりライフルの威力はすごい。

いくらケンスケがナイフ使いといっても、ライフルの高速弾にはかないっこねぇ。

ナイフの距離より遠いところから、ブチ込んでやる。

まず、膝だ。

膝を使い物にさせなくしてやる。

次は手だ。

両掌をブチ抜いて、ナイフを使えなくしてやる。

あとはなぶり殺しだ。

泣き騒がせてやる。

おっと、その前に。

ケンスケに引導を渡す練習台に、このクソ警官はうってつけかもな。

そうだ。

照準を合わせて引き金を引く、こいつがオレは苦手なんだ。

長田はそのことに思いいたった。

ポツポツと頬を濡らす雨の量が増えてきた。

しかも薄暗くなり始めている。

闇に紛れるには最高のシチュエーションだ。

長田はライフルの銃床を肩に当て、後姿の山下刑事に照準を合わせた。

慎重に山下の背中に銃口を向けた。

いまだ。

長田は引き金を絞り込もうとした。

ドスッとわき腹に衝撃が走った。

思わずライフルを肩から放し、確かめる。

また衝撃。

今度は肩甲骨あたりだ。

カッと血が逆流した。

なんだ、このっ!

見ると石礫が落ちている。

上方に目を上げた。

ヤツだ!

ケンスケだ!

憎悪に刺し貫かれたような、鋭い視線が長田を射る。

「長田。オレがオマエを殺す」

ケンスケの抑揚の効いた声がよく通った。

その声に、山下刑事も振り向いた。

「長田…。ケンスケもか…」

山下、長田、ケンスケが一定の距離を保ったまま、三すくみになっている。