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鼠の目#478(ほぼ全文はリンクで)

鼠の目・これまでの梗概

<主な登場人物>

オレ=初老のフリーランス便利屋、通称、鼠。説教多し
オカマのマリー=オカマバーの女将、陸上自衛隊OB
ケンスケ=オレの助っ人、仏外人部隊脱走兵
山下=定年前の所轄の刑事
和田由美子=事務所の雑用を請け負ってくれている素敵な女性
和田洋子=和田さんの一人娘
川崎真知子=オレの依頼人。川崎徳一の孫
川崎真理子=真知子の妹
徳永高男=波動研究会の会長、川崎徳一の嫡外子
文龍名=カルト教団・統合真理教会のボス、波動の最高幹部も兼ねる
後藤=徳永の部下、事務方、対外折衝部門の長
宮崎一平=和田洋子のサークル仲間。波動研究会の末端メンバー
長田=波動のメンバー、上島上等兵の息子、徳永の非公然活動を担う
滝川順平=靴屋の隠居、川崎徳一の戦友
川崎徳一=本名・李光徳、川崎姉妹の祖父
川崎良子=川崎徳一の夫人。川崎聖一の母。古朝鮮の祭祀一族の末裔
川崎聖一=川崎徳一の息子であり、川崎姉妹の父。徳一の死後、失踪
川崎篤子=川崎聖一の妻。川崎姉妹の母。廃宮家の末裔
上島上等兵=滝川、川崎の終戦時の上官。長田の父親
安田=TV局の放送記者

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安田は自らに課していることがあった。

現場の生な空気を吸わない限り、原稿はできやしない、と。

警察広報や通信社電報に頼っていては、なにもわかりやしない、と痛切に思っていた。

原稿を書く、読む、ということでは最低限のことはできるだろう。

しかしオレはリアルな人間に迫りたい。

それは無味乾燥な5W1Hで発表される警察広報には存在しない。

ただ文字面が羅列されているだけだ。

殺人現場に流れた血と凶器が発する無言の叫び。

淫売宿で繰り広げられる粘液と分泌物。

業者と政治家、高級官僚の間で交わされる乾杯の音と、札びらの匂い。

それらをリアルに感じ取れなければ、記事としての命はない。

そもそもオレは警察広報の代弁者ではないのだ。

代弁者に成り果てれば、サラリーマン安田とはなりえても、「記者」安田とはなり得ないはずだ。

これこそがオレの矜持だ、と思っていた。

蛇蝎のごとく嫌われようとも、塩や水をまかれてもいい。

しかし、それでもオレは記者・安田であるべきだ、と心に刻んでいた。

安田にとって警戒線を破ることは児戯に等しかった。

山中なのだ。

しかも雨がしのつき、薄暗くなり始めている。

少し後方に下がり、わずかに迂回すれば、なんなんく警戒線を突破できた。

登山道にでるまで、鬱陶しいヤブコギはあるが、それさえこなしてしまえば、簡単なものだった。

あとは警察に見つからぬよう、注意して進めば、どうということはなかった。

安田は自らの体力を叱咤し、可能な限り強く足を運んだ。

現場までわずか40分。

自分でも驚くほどの短時間で到着することができた。



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