スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

鼠の目#481(ほぼ全文はリンクで)

鼠の目・これまでの梗概

20070320_204298.jpg

安田の短くはない記者生活でも、目前で人が殺される状況は初めてだった。

確かに、イヤになるほど死体を見た。

怪我人も見た。

子を事故で失った肉親の愁嘆場など、枚挙に暇がないほどだ。

そのような情景を見続けると、記者は一様にスレてくる。

単純に感情移入だけでは済まないという客観性が備わってくる。

ある意味、それは記者の修練の結果ではあるが、ややもすればニヒルで虚無的な世界観を生み出すことにもなる。

焼死体を「焼き鳥」といってはばからぬような不遜な性格ともなる。

しかし、今度ばかりは違った。

脳漿と血を吹き上げ、眼球が破裂し、瞬間でむごたらしい物体と化してしまったのだ。

さきほどまで安田のことを誰何した若い警官が、首から上を粉砕されて転がっている。

胴震えのあと、安田は強烈な吐き気を催した。

酸っぱいものが胸を覆い、胃液が逆流してきた。

安田は吐いた。

先刻、胃袋にいれたコンビニのオニギリらしい未消化の米飯と、薄汚い色の胃液を吐き散らした。

それは安田のズボンの裾を汚した。

しかし安田のムービーカメラは過たず発射方向を睨んでいた。

そこには蒼白な顔の、死んだ警官よりさらにあどけない表情の若者が写しこまれていた。

改めてその記録画像を再現すれば、呆けたような表情で警官の死体を眺めている若者が写っているはずだ。

そして、その若者が手にしているライフルの銃口が、小刻みに震えていることも記録されているはずだ。



上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。