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鼠の目#482(ほぼ全文はリンクで)

鼠の目・これまでの梗概

<主な登場人物>

オレ=初老のフリーランス便利屋、通称、鼠。説教多し
オカマのマリー=オカマバーの女将、陸上自衛隊OB
ケンスケ=オレの助っ人、仏外人部隊脱走兵
山下=定年前の所轄の刑事
和田由美子=事務所の雑用を請け負ってくれている素敵な女性
和田洋子=和田さんの一人娘
川崎真知子=オレの依頼人。川崎徳一の孫
川崎真理子=真知子の妹
徳永高男=波動研究会の会長、川崎徳一の嫡外子
文龍名=カルト教団・統合真理教会のボス、波動の最高幹部も兼ねる
後藤=徳永の部下、事務方、対外折衝部門の長
宮崎一平=和田洋子のサークル仲間。波動研究会の末端メンバー
長田=波動のメンバー、上島上等兵の息子、徳永の非公然活動を担う
滝川順平=靴屋の隠居、川崎徳一の戦友
川崎徳一=本名・李光徳、川崎姉妹の祖父
川崎良子=川崎徳一の夫人。川崎聖一の母。古朝鮮の祭祀一族の末裔
川崎聖一=川崎徳一の息子であり、川崎姉妹の父。徳一の死後、失踪
川崎篤子=川崎聖一の妻。川崎姉妹の母。廃宮家の末裔
上島上等兵=滝川、川崎の終戦時の上官。長田の父親
安田=TV局の放送記者

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その若者が震えながらいった。

「す、す、すみません…」

すみません、だと?

安田は汚れた口元を手で拭いながら、訝しく思った。

すみません、ってな謝る言葉だ。

この若者は申し訳ない、と思っているのか?

安田はそのことが不思議でならなかった。

安田は思い切ってその若者に呼びかけた。

「君は波動かね?」

え、ええ、と若者は弱々しく答えた。

それは辛うじて安田の耳に聞こえた。

「なぜ、彼、あー、つまりその警官を射殺したんだね?」

このような会話が成り立つのかどうか、安田には判らなかったが、質問を発せしめたのは安田自身の記者本能だったのかもしれない。

ムービーカメラも回りっぱなしだった。

「あ、いや、ごめんなさい。殺すつもりはなかったんです」

「しかし君はライフルの引き金を引いた。結果、その警官は頭を打ち抜かれ死んだ。そのことはこのムービーカメラが記録している」

「そ、そ、そんな…。ウソでしょ…」

「こんなところでウソをいっても始まらない。君の銃弾で彼は死んだんだ」

一気に、波動の若者の顔が歪んだ。

若者の目がみるみる曇った。

若者は銃をその場に放り捨てると、つかつかと安田の近くに寄ってきた。

近づいてくるその若者の顔がハッキリしてくると、ボロボロと涙を流していることが判った。

若者はしきりに頭を下げながら、スイマセン、スイマセンと謝っていた。

安田のすぐ目前まで来ると、若者はガバと土下座した。

ごめんなさい、と頭を土にこすり付けていた。

「手をあげてくれ。オレは警官でもなんでもない。プレス、つまり放送記者なんだ。オレに謝ったところでなにもならいんだ」

「いや、いいんです。謝らさせてください。ごめんなさい…」

涙声で答えた若者は、そのままヒクッヒクッと嗚咽し始めた。



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