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鼠の目#388(ほぼ全文はリンクで)

鼠の目・これまでの梗概

<主な登場人物>

オレ=初老のフリーランス便利屋、通称、鼠。説教多し
オカマのマリー=オカマバーの女将、陸上自衛隊OB
ケンスケ=オレの助っ人、仏外人部隊脱走兵
山下=定年前の所轄の刑事
和田由美子=事務所の雑用を請け負ってくれている素敵な女性
和田洋子=和田さんの一人娘
川崎真知子=オレの依頼人。川崎徳一の孫
川崎真理子=真知子の妹
徳永高男=波動研究会の会長、川崎徳一の嫡外子
文龍名=カルト教団・統合真理教会のボス、波動の最高幹部も兼ねる
後藤=徳永の部下、事務方、対外折衝部門の長
宮崎一平=和田洋子のサークル仲間。波動研究会の末端メンバー
長田=波動のメンバー、上島上等兵の息子、徳永の非公然活動を担う
滝川順平=靴屋の隠居、川崎徳一の戦友
川崎徳一=本名・李光徳、川崎姉妹の祖父
川崎良子=川崎徳一の夫人。川崎聖一の母。古朝鮮の祭祀一族の末裔
川崎聖一=川崎徳一の息子であり、川崎姉妹の父。徳一の死後、失踪
川崎篤子=川崎聖一の妻。川崎姉妹の母。廃宮家の末裔
上島上等兵=滝川、川崎の終戦時の上官。長田の父親

コット


長田は宿舎用に設営されたテントに入った。

天井に電池式の蛍光灯が吊り下げられていた。

五人ほどが、コットに寝そべったり、腰掛けたりしている。

のっそり現れた長田にみのの視線が集中した。

知っている顔はなかった。

誰何する声が出る前に、長田は名乗った。

「長田という。諸君らとは初めてだろう。波動じゃあまり表に出ることがなかったんでな。むしろ諸君がトレイニングを受けた側とのコレスポンディング任務が中心だった。あー、だから海外のほうが長い。そろそろオレも合流するべきだろうと思ってな、今、ここへ入ってきた。文龍名とも話をした。まあ、よろしく頼む」

長田は「海外」にことさらアクセントをこめて語った。

ブラフをかましたのだ。

しかし、そのブラフはテントの中ではけっこう効いた。

彼らも緊張の中、なにかにすがりたいと祈るような思いだったのだろう。

「訓練期間は長かったんですか」と一人の若者が尋ねた。

緊張し、引き締まった表情だ。

「あ?ああ。結構長かった」

「じゃ、ライフル訓練も長かったんですね」とコットに腰掛けた別の若者がいった。

「うむ。派遣された訓練キャンプの場所柄、カラシニコフの経験は薄いんだがな。M16ばかりだった。まあ、いずれにせよ歩兵用小火器だ。直感的にできると思う」

これもブラフだ。

「じゃあフィリピンあたりかな」

「いや、まあ、それはいいじゃないか。あまり語りたくない」

長田は韜晦するようにいった。

若者たちはそれで納得したようだった。

「眠りたいんだが、どのコットを使えばいい」

「あいているところを、どこでもどうぞ」

その答えに、長田は一番奥のコットに腰掛けた。

靴を脱ぎ、男臭い毛布を引き上げた。

明日はどこからか靴下とブーツを調達しなきゃな、と思った。

「じゃあ、疲れてるんで、先に寝るわ」

三分後、長田の鼾が聞こえてきた。

長田は基本三大欲でのみ生きる粗暴単純な男なのである。



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