不眠症の眠れない夜

元アル中、初老の繰り言、戯れ言か、と。

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鼠の目#390(ほぼ全文はリンクで)

鼠の目・これまでの梗概

<主な登場人物>

オレ=初老のフリーランス便利屋、通称、鼠。説教多し
オカマのマリー=オカマバーの女将、陸上自衛隊OB
ケンスケ=オレの助っ人、仏外人部隊脱走兵
山下=定年前の所轄の刑事
和田由美子=事務所の雑用を請け負ってくれている素敵な女性
和田洋子=和田さんの一人娘
川崎真知子=オレの依頼人。川崎徳一の孫
川崎真理子=真知子の妹
徳永高男=波動研究会の会長、川崎徳一の嫡外子
文龍名=カルト教団・統合真理教会のボス、波動の最高幹部も兼ねる
後藤=徳永の部下、事務方、対外折衝部門の長
宮崎一平=和田洋子のサークル仲間。波動研究会の末端メンバー
長田=波動のメンバー、上島上等兵の息子、徳永の非公然活動を担う
滝川順平=靴屋の隠居、川崎徳一の戦友
川崎徳一=本名・李光徳、川崎姉妹の祖父
川崎良子=川崎徳一の夫人。川崎聖一の母。古朝鮮の祭祀一族の末裔
川崎聖一=川崎徳一の息子であり、川崎姉妹の父。徳一の死後、失踪
川崎篤子=川崎聖一の妻。川崎姉妹の母。廃宮家の末裔
上島上等兵=滝川、川崎の終戦時の上官。長田の父親

アフガン


ホカホカと湯気をあげる梅昆布茶を手に、ケンスケは倒産ラブホから失敬したカウチに腰掛けた。

ズズッと啜る。

「フーッ、コーヒーなんぞよりはるかにうまいな」

「へぇ、ケンスケもコーヒーが嫌いか」

「いや、あれはあれで呑む。第一、日本以外じゃ梅昆布茶なんてないからな」

「そりゃそうだろう」

「コーヒーは中枢神経を覚醒させ、攻撃的になる飲み物と思っている。その点、日本茶や、ああ、特に梅昆布茶なんてのは、気持ちを沈静させ、静謐な思考に向いている」

「おや、飲料文化学ってわけかい。でもこれからは攻撃的にならざるを得ないかもしれんぜ」

「だからさ。人間はバランスが必要だ。攻撃一方、守備一方じゃ形にならねぇ。メリハリって考えりゃいい」

ケンスケはうまそうに梅昆布茶を啜る。

一体、このケンスケという男、長い付き合いだが、懐の深さには驚かされるばかりだ。

武闘派でありながら、薄茶をこよなく愛す。

ナイフを握らせれば剣呑この上ないが、ブルースギターを弾かせると、訥々渺々と魂を揺さぶる。

オレなどの想像の及ばぬ旅を続けていたのだろう。

無論、ヤツが自分からいわない限り、尋ねても答えもしないが。

事務所の電話が鳴った。

カウチ越しに手を伸ばし受話器を取った。

聞きなれた不機嫌そうな声がした。

「山下だ」

「早朝から、どうした」

「手短に用件だけいう。質問はなしだ」

オレは受話器を握り締めたまま、カウチから立ち上がり、机に向かった。

声のトーンからすると、歓迎されざる話に思える。

「公安が動き始めた。波動の監視を始めようとした矢先に、あの土地の住民から所轄を通じて通報があった」

「それで?」

「彼ら波動一派が武装しているのではないか、と思われるフシがある。メンバーの出入国履歴を検索すると、フィリピンやパレスチナ、あるいはミャンマー、ボリビア、アフガンへの渡航歴がゴロゴロでてきた」

「いずれも紛争地域だな」

「波動のダミー商社のインボイスもあやしい。ライフルや実包ではないか、と推察される」

「おいおい、それじゃまったくのゲリラ集団じゃないか。あ、これは質問じゃない。感想だ」

オレは握った受話器が汗ばむのを感じた。



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