鼠の目#403(ほぼ全文はリンクで)

鼠の目・これまでの梗概

シューズ

あー、なんだかとりとめがなくなったな。

しかし、このへん、諸君も理解できるだろ?

果てしなくダラシがなくなってしまった日本人、そしてだらしのなさを是とする、文化。

それがおかしいといいつつも、だらしのなさを矯正するためにカルトに走り、殺人さえ辞さないという風潮。

どれもこれもなにか極めて重大なこと、それは日本人に限らず、人類が持ちえた叡智や、社会、他人に対しての真摯な態度、とにかく一切合財ふくめて、コアたる矩をないがしろにしているとしか思えない。

それはなぜか、というとだな、オレにも若干の考えがある…。

そのことを書こうとしたときだ、おはよう、という爽やかな声とともに、和田由美子が現れた。

いかん。

先を進めるぜ。

オレの考えはいずれ書く。

しばらく待っててくれや。

由美子もオレと同じく、登山用のウェアで固めている。

厚手のチェックのウールのシャツ、ポリ混の丈夫そうなパンツ、ハイカットの軽トレッキングシューズだ。

手にゼロポイントのバックパックを持っている。

「ああ、おはよう」

自分の挨拶に微妙な揺れを感じた。

セックスのあと、放ちっぱなしでグースカ寝込んでしまった自分をオレは恥じている。

その心の揺れが反映されているのだろう。

ケンスケも気付いたかもしれん。

和田由美子の顔はこれ以上ないくらい爽やかに見えた。

化粧っ気はまるでない。

ルージュすら引いていない。

「あら、ケンスケさん、もういらしてたの」

「うん。ぼくは遅れるのが嫌いでね。五分遅れるより、一時間早いほうがいい、という習い性なんだ。外人部隊で徹底的に仕込まれた。それに梅昆布茶も飲みたかった」

「あら、そう。いい心がけだわ。約束におくれるなんて、アクシデントなら別だけど、いい大人のすることじゃないわよね」

その通りだ。

オレもそう思う。