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鼠の目#404(ほぼ全文はリンクで)

鼠の目・これまでの梗概

<主な登場人物>

オレ=初老のフリーランス便利屋、通称、鼠。説教多し
オカマのマリー=オカマバーの女将、陸上自衛隊OB
ケンスケ=オレの助っ人、仏外人部隊脱走兵
山下=定年前の所轄の刑事
和田由美子=事務所の雑用を請け負ってくれている素敵な女性
和田洋子=和田さんの一人娘
川崎真知子=オレの依頼人。川崎徳一の孫
川崎真理子=真知子の妹
徳永高男=波動研究会の会長、川崎徳一の嫡外子
文龍名=カルト教団・統合真理教会のボス、波動の最高幹部も兼ねる
後藤=徳永の部下、事務方、対外折衝部門の長
宮崎一平=和田洋子のサークル仲間。波動研究会の末端メンバー
長田=波動のメンバー、上島上等兵の息子、徳永の非公然活動を担う
滝川順平=靴屋の隠居、川崎徳一の戦友
川崎徳一=本名・李光徳、川崎姉妹の祖父
川崎良子=川崎徳一の夫人。川崎聖一の母。古朝鮮の祭祀一族の末裔
川崎聖一=川崎徳一の息子であり、川崎姉妹の父。徳一の死後、失踪
川崎篤子=川崎聖一の妻。川崎姉妹の母。廃宮家の末裔
上島上等兵=滝川、川崎の終戦時の上官。長田の父親

露天

「でも、和田さん。今日はスッピンかい」

「そうなのよ、ケンスケさん。みっともないけど、許してね。山に入るのにいちいち気にしてたんじゃね、ご迷惑になっちゃうでしょ」

「そんなことないよ。和田さんって、昔からほとんど化粧っ気がないしさ、それにもともと輝くような知性が感じられるもん。一段とすっきりしてるよ」

「ありがとう。お世辞でもうれしいわ。じゃあ、お茶でもいれましょうか、まだ時間もあるし」

「お、いいな。和田さんのお茶はうまいんだ。このオッサンのがさつな味とは全然ちがう」

ケンスケの頌辞に由美子ははにかんだ。

「ああ、それは認める。同じ茶葉を使ってもこうも違うのか、と思うな。茶の入れ方にはきっと天才性がいるんだ」

「おやおや、あなたまでどうしたの。今からのことで昂ぶっていらっしゃる、とか?」

「いや、事実を述べたまでだ。とにかくおいしい茶をいただこうじゃないか」

和田由美子が流し場に引き込んだ。

じっくりと淹れる上等な茶葉の豊かな香りが満ちてきた。

これだ。

これだよ。

コーヒーが苦手なオレにはたまらなくいい香りだ。

全身の緊張がほどけるようだ。

由美子が盆に茶を載せて運んできた。

やや大振りな茶碗に淹れてある。

たくさん飲みたい気分なんでしょ、といい添えてテーブルに配した。

若干、小さめの茶碗は由美子用だろう。

それぞれの位置に適当に腰掛け、茶を啜る。

あれは、なぜなのかな、うまい茶を啜ると、必ずフーッと溜息が出る。

温泉に浸かった瞬間に出る「ア、ア、アーッ」というオノマトペと一緒だ。

オレとケンスケは同時にフーッと溜息をついた。

「そうだな、この茶を啜り終えたら、出るとするか。少し早いかもしれんが、全員そろったしな。どうだ、ケンスケ」

「ああ、そうしよう」

由美子も、顎を引いて、賛意を示した。



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