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鼠の目#424(ほぼ全文はリンクで)

鼠の目・これまでの梗概

<主な登場人物>

オレ=初老のフリーランス便利屋、通称、鼠。説教多し
オカマのマリー=オカマバーの女将、陸上自衛隊OB
ケンスケ=オレの助っ人、仏外人部隊脱走兵
山下=定年前の所轄の刑事
和田由美子=事務所の雑用を請け負ってくれている素敵な女性
和田洋子=和田さんの一人娘
川崎真知子=オレの依頼人。川崎徳一の孫
川崎真理子=真知子の妹
徳永高男=波動研究会の会長、川崎徳一の嫡外子
文龍名=カルト教団・統合真理教会のボス、波動の最高幹部も兼ねる
後藤=徳永の部下、事務方、対外折衝部門の長
宮崎一平=和田洋子のサークル仲間。波動研究会の末端メンバー
長田=波動のメンバー、上島上等兵の息子、徳永の非公然活動を担う
滝川順平=靴屋の隠居、川崎徳一の戦友
川崎徳一=本名・李光徳、川崎姉妹の祖父
川崎良子=川崎徳一の夫人。川崎聖一の母。古朝鮮の祭祀一族の末裔
川崎聖一=川崎徳一の息子であり、川崎姉妹の父。徳一の死後、失踪
川崎篤子=川崎聖一の妻。川崎姉妹の母。廃宮家の末裔
上島上等兵=滝川、川崎の終戦時の上官。長田の父親

T型

どうするね、とケンスケがいった。

「突っ込む。まだ轍は続いている。どうにもこうにもならない、というところまで行こう。少しでも楽がしたい」

「Uターンすらできなくなるかもしれんぜ」

「構わんよ。どうせ11年落ちのポンコツだ。この老いぼれカローラの死水を取るには相応しいかもしれん」

「ロシアじゃ現役だぜ、こんなんでも」

「どうせ車じゃねぇか。陳腐化しないと買い替え需要が起こらないんだろう。日本経済の原動力だよ」

「へっ、ご高説、痛みいります、ってか」

ケンスケの軽口が小気味いい。

オートマチックシフトレバーをLに固定し、強引に林道を上がる。

流石にトヨタクォリティだ。

悲鳴のようなエンジン音もしない。

日本技術の勝利じゃねぇか。

そう、技術だ。

いまさら誰も手放さない、いや、なくなれば全世界が大混乱するクルマという技術だ。

T型フォードが1907年の発売だ。

それからたかだか百年。

人類は足で歩くことを放棄した。

さよう。

それはこのクルマに乗る四人を含めて、だ。

便利だ。

しかも快適だ。

真冬はヒーターを真夏はエアコンを効かし、洒落たCDなぞ聞きながら、咥え煙草の片手で突き進める。

しかし、それが行き着いた…やめよう、また説教になる。

徐々にエンジンが喘ぐようになってきた。

1500CCで4人乗車、しかも林道の急登だ。

ランドクルーザーでもない限り、そんな設計はなされていない。

轍の跡もかすかになってきた。

突然、という感じで土砂が林道に崩れ落ち、完全な行き止まりになった。

カローラの鼻先が停止した。

「ここまでだね」とケンスケ。

「そうだな。ここから歩きだ」

オレたち四人、それぞれのドアから身体を出し、図ったように伸びをした。



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