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鼠の目#434(ほぼ全文はリンクで)

鼠の目・これまでの梗概

<主な登場人物>

オレ=初老のフリーランス便利屋、通称、鼠。説教多し
オカマのマリー=オカマバーの女将、陸上自衛隊OB
ケンスケ=オレの助っ人、仏外人部隊脱走兵
山下=定年前の所轄の刑事
和田由美子=事務所の雑用を請け負ってくれている素敵な女性
和田洋子=和田さんの一人娘
川崎真知子=オレの依頼人。川崎徳一の孫
川崎真理子=真知子の妹
徳永高男=波動研究会の会長、川崎徳一の嫡外子
文龍名=カルト教団・統合真理教会のボス、波動の最高幹部も兼ねる
後藤=徳永の部下、事務方、対外折衝部門の長
宮崎一平=和田洋子のサークル仲間。波動研究会の末端メンバー
長田=波動のメンバー、上島上等兵の息子、徳永の非公然活動を担う
滝川順平=靴屋の隠居、川崎徳一の戦友
川崎徳一=本名・李光徳、川崎姉妹の祖父
川崎良子=川崎徳一の夫人。川崎聖一の母。古朝鮮の祭祀一族の末裔
川崎聖一=川崎徳一の息子であり、川崎姉妹の父。徳一の死後、失踪
川崎篤子=川崎聖一の妻。川崎姉妹の母。廃宮家の末裔
上島上等兵=滝川、川崎の終戦時の上官。長田の父親

真珠湾

純軍事的にまったく勝ち目がないとき、指揮官は必ず最後の拠りどころを敢闘精神や、宗教的犠牲心に求める。

それは波動に限らない。

日本陸軍、海軍が冷静な戦略戦術をもたず、敢闘精神のみを前面に自爆したこととなんら変わりがない。

無論、その本質は洋の東西、時代の今昔を問わない。

その典型が日本陸海軍だった、というだけだ。

戦いとは総力戦である、という大前提を意識的に放棄している。

戦いはある意味、オペラや映画といった総合芸術に酷似している。

映画一本のために、ロケハンや時代考証から始まり、役者、スタッフ、大道具、小道具、エキストラ、はてはケータリングの手配から、それらすべてのソロバン勘定。

一俳優や監督だけの仕事ではできるものではない。

戦いもそうだ。

戦略戦術があり、兵站輸送があり、兵士に武器、それを指揮する下士官がいて、将官がいなくてはならない。

すべてがシステム的になめらかに回転すること。

これなくして戦いはありえない。

しかし、それらすべてを捨象し、精神力にのみ依存するという事実。

この時点で、すでに敗北は予測されている。

勝算のない戦いは、戦いとは呼べない。

自滅、自爆と呼ぶしかない。

冷静な裏社会ビジネスマンであった文龍名は、自分のアジ演説に酔っていたのではない。

どう考えても今回の蜂起はなんあらの展望も生み出さないであろう、という計算はたっていた。

ただ文龍名には滅びへの志向があった。

半島出身の出自、裏社会での冷酷な成り上がり、それらの自らの半生を振り返ったとき、果たしてこれでよかったのか、という強烈な索漠感があった。

金と暴力を無残に行使し、虫けらのように人間を捻り潰してきたこと。

自分の生きた証はなんだったのだろう、という根源的な疑問を、ここ数年、解消できないでいた。

その疑問の回答、あるいは僅かな手掛かりを求めてもがいた結果が、波動だった。

文龍名にとって、波動は川崎姉妹という名分を戴き、そのことを自らに血肉化することで文龍名自身の生を完成せしめようとしたものだった。



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