不眠症の眠れない夜

元アル中、初老の繰り言、戯れ言か、と。

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鼠の目#367(ほぼ全文はリンクで)

鼠の目・これまでの梗概

車券


「そしたらね、フッと楽になった。すっかり楽に、なんていわない。自殺という考えにがんじがらめになっている自分が、無駄に落ち込んでいるように思えた」

オレはハイライトに火を点け、吸い込んだ。

いがらっぽさが心地よかった。

「無駄に?どういうことなんだろう」

携帯灰皿を取り出し、灰をこすりつけた。

火玉の赤身が少し闇に浮かび上がった。

「自殺はあとでもできる、っていうこと。たとえば長田を懲らしめられるとすれば、それはわたしの大いなる喜び。その喜びを味わってからでも死ぬのは遅くないわ、と閃いたの」

「そう。ますます説得力を感じるな」

「だからね、こうすることにした。まずなにか目標をたてよう、って。今度はあなたのいう神さびた土地に長田を追ってみる。そしてそこにいるであろう川崎姉妹と会ってみたい。波動のなんたるか、なぜ若者二人が殺されねばならなかったか、それを知りたい。それを目標にすれば、少なくともあと暫くは死ぬ必要がないわ」

「なるほど。しかし、目標が達成されたら自死するのか?」

「どうかしら。ただいえるのはなにか次の目標をたてそうな気がするわ。直感というか、予感だけどね」

オレは大きくハイライトを吸い込んだ。

「由美子。いいことを教えてあげよう。直感には従うことだ。直感は過たない。誤るのは判断なんだ。グズグズ考えて裏目を喰らうのが一番腹立たしい。直感に従えば、少なくとも精神衛生上は快適だ」
「あら、初めて由美子って呼んでくれたわね」

「ああ、そういえばそうだな。特段、意識して口にしたわけじゃないが…。そういうこともあるさ」

そう。

流れに委ねて無意識に発するのが一番いいんだ。

声が裏返るようなみっともない醜態をさらすこともない。

意識して出たんじゃない。

由美子が自分の底を晒そうとしているんだ。

ならばオレだって由美子に惚れているという感情に沿ってもよかろう。

要するに会話であれ、セックスであれ、つきつめれば他者とのコミュニケーションなんだ。

居心地のいい流れや形に乗っていくことが最良最上のコミュニケートと思うがな。

どう思うかね、諸君。



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