鼠の目#440(ほぼ全文はリンクで)

鼠の目・これまでの梗概

<主な登場人物>

オレ=初老のフリーランス便利屋、通称、鼠。説教多し
オカマのマリー=オカマバーの女将、陸上自衛隊OB
ケンスケ=オレの助っ人、仏外人部隊脱走兵
山下=定年前の所轄の刑事
和田由美子=事務所の雑用を請け負ってくれている素敵な女性
和田洋子=和田さんの一人娘
川崎真知子=オレの依頼人。川崎徳一の孫
川崎真理子=真知子の妹
徳永高男=波動研究会の会長、川崎徳一の嫡外子
文龍名=カルト教団・統合真理教会のボス、波動の最高幹部も兼ねる
後藤=徳永の部下、事務方、対外折衝部門の長
宮崎一平=和田洋子のサークル仲間。波動研究会の末端メンバー
長田=波動のメンバー、上島上等兵の息子、徳永の非公然活動を担う
滝川順平=靴屋の隠居、川崎徳一の戦友
川崎徳一=本名・李光徳、川崎姉妹の祖父
川崎良子=川崎徳一の夫人。川崎聖一の母。古朝鮮の祭祀一族の末裔
川崎聖一=川崎徳一の息子であり、川崎姉妹の父。徳一の死後、失踪
川崎篤子=川崎聖一の妻。川崎姉妹の母。廃宮家の末裔
上島上等兵=滝川、川崎の終戦時の上官。長田の父親

マガジン

ライフルを手にした若者が一斉に散ってく様子が、長田に見えた。

なるほど、散開するのか、と直感できた。

ふむ、確かに散開してしまえば、警察どもは一網打尽、狙いを定めてドン、で済む。

まんざら波動もバカじゃないみたいだな。

その刹那、ある考えが閃いた。

それは人に暴力を加えることに喜びを覚える偏執狂的錯乱者の長田らしい一閃だった。

そうだ、ドサクサに紛れて警官狩りに参加してやろう…。

長田は脇のライフルを引き寄せた。

弾装マガジンもたっぷりある。

そもそもこのライフルだって、気まずい国から気まずい方法で手に入れたものだろう。

線状痕から実行者を割り出すこともできない。

なにしろ目の子算で30数丁がとこあったはずだ。

それらから煙雨のごとく銃弾が発射される。

それに乗ろうってんだ。

考えてもみやがれ、ガキの頃から、どれだけサツカンから虐められたか。

どいつもこいつもオレのことを舐めやがって、部落と朝鮮人のアイノコと散々バカにしやがった。

駅前交番のクソサツカンだったぜ。

おし、行きがけの駄賃だ。

サツカンの一人や二人、殺したってどうってことないぜ。

どうせ波動のやらかしたこと、で済むんだからな。

長田は自分の考えに酔った。

ただ、駅前交番の警察官の名誉のために付け加えておこう。

交番の警察官は長田のためをこそ思い、声をかけた。

環境、風俗とも劣悪な環境のなかで、少しでも前向きに生きることを諭したのだった。

そのことを長田は理解しえない。

むしろ反感しか感じていなかった。

そもそもの原因が長田の恐喝や暴行事件、あるいは万引きといった粗暴行為であることも記憶していない。

悪いのはすべて他者であり、自分はまったく悪くない、と規定していた。

自己憐憫意識が極端にまでふくらみきった常習犯罪者の発想である。