不眠症の眠れない夜

元アル中、初老の繰り言、戯れ言か、と。

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鼠の目#368(ほぼ全文はリンクで)

鼠の目・これまでの梗概

<主な登場人物>

オレ=初老のフリーランス便利屋、通称、鼠。説教多し
オカマのマリー=オカマバーの女将、陸上自衛隊OB
ケンスケ=オレの助っ人、仏外人部隊脱走兵
山下=定年前の所轄の刑事
和田由美子=事務所の雑用を請け負ってくれている素敵な女性
和田洋子=和田さんの一人娘
川崎真知子=オレの依頼人。川崎徳一の孫
川崎真理子=真知子の妹
徳永高男=波動研究会の会長、川崎徳一の嫡外子
文龍名=カルト教団・統合真理教会のボス、波動の最高幹部も兼ねる
後藤=徳永の部下、事務方、対外折衝部門の長
宮崎一平=和田洋子のサークル仲間。波動研究会の末端メンバー
長田=波動のメンバー、徳永の非公然活動を担う
滝川順平=靴屋の隠居、川崎徳一の戦友
川崎徳一=本名・李光徳、川崎姉妹の祖父
川崎良子=川崎徳一の夫人。川崎聖一の母。古朝鮮の祭祀一族の末裔
川崎聖一=川崎徳一の息子であり、川崎姉妹の父。徳一の死後、失踪
川崎篤子=川崎聖一の妻。川崎姉妹の母。廃宮家の末裔
上島上等兵=滝川、川崎の終戦時の上官。こすからい古参下士官

茶


オレは和田由美子と並んで歩き続ける。

指呼のうちにメインストリートに出た。

右に行けば和田由美子のマンション、左だとオレのヘッポコ事務所だ。

オレは右に行くものだ、と理解していた。

ところが和田由美子は事務所に戻ろう、という。

「どうしてだい?」

「明日の用意ができていないじゃない」

「適当に詰め込めばいいんだろ」

「その適当ができるの?」

ウッ、とオレは詰まった。

そう、事前の準備とか、今まですべて彼女に頼んでいた。

過不足なしで、それは見事に用意されていた。

オレがやれば間違いなく余分なものがありすぎ、必要なものが欠品しているだろう。

「あー、多分、メチャメチャになる予感がする」

「明日はわたしも同道するのよ。ちゃんと用意しておきたいわ」

「痛み入る。すまないが…頼む」

オレは素直にその申し出を受けることにした。

薄っ暗い階段を上がり、ヘッポコスチールドアを解錠し、中へ入る。

ドア下に突っ込んであるDMの類はそのままゴミ箱行きだ。

オレは倒産したラブホテルから失敬したソファに腰を落とした。

今となっては、その形状が妙な気分を励起させる。

お茶でも淹れましょう、という由美子の声に、頼む、と答えた。

明日のためにハルシオンの力を借りて眠ろう。

ハイライトを喫い終わる頃、じっくりとぬるめに淹れたお茶をお盆に載せ、由美子が対面に座った。

お茶も淹れ方次第でまったく違う。

事務所のお茶は、決して安物のそれじゃない。

オレ自身が日本茶派であることもあって、結構、上等な茶を置いている。

しかし、オレが雑に淹れてしまうと、これほどうまくはならない。

一口含むと、身体全体から力が抜けた。

緊張が一気にほどけるようだ。

もう一本ハイライトをくらせながら、オレはぼんやりと和田由美子を見ていた。

ああ、確かにいい女だ。

間違いなく心が動いているな、と思った。

ただな、好きだの、惚れただの、そういう言葉を吐きまくるには、オレは少しばかりスレすぎた。



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