鼠の目#452(ほぼ全文はリンクで)

鼠の目・これまでの梗概

<主な登場人物>

オレ=初老のフリーランス便利屋、通称、鼠。説教多し
オカマのマリー=オカマバーの女将、陸上自衛隊OB
ケンスケ=オレの助っ人、仏外人部隊脱走兵
山下=定年前の所轄の刑事
和田由美子=事務所の雑用を請け負ってくれている素敵な女性
和田洋子=和田さんの一人娘
川崎真知子=オレの依頼人。川崎徳一の孫
川崎真理子=真知子の妹
徳永高男=波動研究会の会長、川崎徳一の嫡外子
文龍名=カルト教団・統合真理教会のボス、波動の最高幹部も兼ねる
後藤=徳永の部下、事務方、対外折衝部門の長
宮崎一平=和田洋子のサークル仲間。波動研究会の末端メンバー
長田=波動のメンバー、上島上等兵の息子、徳永の非公然活動を担う
滝川順平=靴屋の隠居、川崎徳一の戦友
川崎徳一=本名・李光徳、川崎姉妹の祖父
川崎良子=川崎徳一の夫人。川崎聖一の母。古朝鮮の祭祀一族の末裔
川崎聖一=川崎徳一の息子であり、川崎姉妹の父。徳一の死後、失踪
川崎篤子=川崎聖一の妻。川崎姉妹の母。廃宮家の末裔
上島上等兵=滝川、川崎の終戦時の上官。長田の父親

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「何人殺した。そのライフルで」

「そいつがなんの関係がある」

「あるんだよ、それがね」

オレにはわかった。

ケンスケは長田の注意力を逸らそうとしている。

そのことはマリーも和田由美子も直感しているようだ。

マリーは軽く拳を握り、また開く動作を繰り返している。

オレは和田由美子にアイコンタクトで後方へ下がれ、と合図した。

僅かづつ、和田由美子も後方へ動き始めた。

「ライフルは撃てば撃つほど熱ダレするって知ってるか」

「なんだ、熱ダレって」

「火薬の温度で銃身が歪むんだ。それを常に修正してやらねばならん」

「関係ねぇな。フルオートでぶち込めばいいだけだろうが」

「いや。ライフルに限ってはそうならん。下手をすれば銃身のなかで弾が詰まって暴発するぜ。なんなら銃身の先を確認してみるんだな」

抑揚のないケンスケの言葉に、粗暴なだけで知恵のない長田が一瞬反応した。

銃身の先端を見ようとしたのだ。

その刹那をケンスケは見逃さなかった。

両脚を十分に使って、長田へ跳躍した。

しかし長田の対応も素早かった。

暴力に対する感性だけは認めざるをえない。

ケンスケの跳躍をかわすべく体を捻りながら、引き金を引いた。

オレはそのとき、和田由美子を右手で抱え込み、立ち木の陰に滑り込もうとしていた。

同時に、ライフルの発射音が数発響いた。

着地と同時にケンスケの蹴りが長田に唸りをあげた。

ギリギリで長田は見切ったが、ケンスケのしなやかな脚が長田の手のライフルを吹っ飛ばした。

空中で二、三度回転すると、ライフルは粘土質な斜面のドサリと落下した。