鼠の目#456(ほぼ全文はリンクで)

鼠の目・これまでの梗概

<主な登場人物>

オレ=初老のフリーランス便利屋、通称、鼠。説教多し
オカマのマリー=オカマバーの女将、陸上自衛隊OB
ケンスケ=オレの助っ人、仏外人部隊脱走兵
山下=定年前の所轄の刑事
和田由美子=事務所の雑用を請け負ってくれている素敵な女性
和田洋子=和田さんの一人娘
川崎真知子=オレの依頼人。川崎徳一の孫
川崎真理子=真知子の妹
徳永高男=波動研究会の会長、川崎徳一の嫡外子
文龍名=カルト教団・統合真理教会のボス、波動の最高幹部も兼ねる
後藤=徳永の部下、事務方、対外折衝部門の長
宮崎一平=和田洋子のサークル仲間。波動研究会の末端メンバー
長田=波動のメンバー、上島上等兵の息子、徳永の非公然活動を担う
滝川順平=靴屋の隠居、川崎徳一の戦友
川崎徳一=本名・李光徳、川崎姉妹の祖父
川崎良子=川崎徳一の夫人。川崎聖一の母。古朝鮮の祭祀一族の末裔
川崎聖一=川崎徳一の息子であり、川崎姉妹の父。徳一の死後、失踪
川崎篤子=川崎聖一の妻。川崎姉妹の母。廃宮家の末裔
上島上等兵=滝川、川崎の終戦時の上官。長田の父親

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オレたちは無言のまま立ち竦んだ。

みな、呆然とマリーの死体を眺めていた。

ケンスケがつとマリーににじりよった。

腹に当てられた血だらけの両手を、自分のバンダナで拭き始めた。

厳しく尖った横顔が声をかけるのをためらわさせた。

ケンスケはマリーの瞼を押さえて完全に閉じさせると、両手を胸で組ませ、合掌の形を取らせた。

そして鮮血でグズグズになった腹部を、縫い合わせるように始末し始めた。

破れた腹部からは腸の一部がはみ出ていた。

ケンスケは構わず、それを腹腔内に押し込んだ。

ケンスケの両手といい、着衣といい、すべてが真っ赤に染まっていた。

ケンスケがマリーの顔近くに膝まずく。

ゆっくりと顔を近づけ、満足げなマリーの頬に接吻をした。

それはむしろ神との接吻を思わせる、荘重な儀式に見えた。

ケンスケがその場で立ち上がった。

全身からすべての躍動感が消えていた。

幽体がそのまま肉体を保有したような形だ。

感情という感情をすべて放棄している、そう見えた。

ケンスケはなんの表情も現すことなく、抑揚のないフラットな声で述べた。

「長田はオレが殺す。徹底して無慈悲に殺す。外人部隊の戦闘はビジネスだが、これはオレの魂の叫びだ。だれも手をだすんじゃない。ゴミはゴミらしく始末する」

オレはゴクリと唾をのんだ。